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2020 / 02 / 06  12:27

不妊症と鍼灸治療の効果

不妊症と鍼灸治療の効果

 女性の社会進出に伴い初婚の平均年齢が年々上がっている現代、不妊に悩む夫婦は増えている傾向にあり、近年では6組に1組は不妊に悩まされているといわれています。これまで不妊といえば女性側に問題があり不妊治療も女性のみが受けている印象でしたが、近年世界保健機関(WHO)の統計によると不妊の原因が、女性のみにある場合が41%、男女両方にある場合が24%、男性のみにある場合が24%、原因不明が11%という報告があり、合計すると不妊症の原因の約半数は男性側にあることが明らかになりました。

 

女性不妊の原因

 

  1. 排卵因子  :視床下部‐下垂体と卵巣とのホルモンの受け渡しに障害がある時に生じます。無排卵、黄体機能不全、卵胞発育不全など
  2. 卵管性因子 :卵子の通り道である卵管が何らかの原因で詰まったり、癒着を起こしている状態。
  3. 子宮性因子 :子宮は胚が着床する部分。子宮に問題があると胚が着床できなくなる。子宮筋腫、子宮腺筋症、子宮内膜ポリープなど
  4. 頸管因子  :頸管粘液不全、頸管炎など
  5. 免疫因子  :精子を除去しようとする免疫反応
  6. その他   :子宮内膜症、など

これらは血液検査や画像所見などで特定できる器質性不妊になります。

 一方原因が特定できない不妊は機能性不妊と呼び、実は女性不妊で最も多いのが原因不明の機能性不妊であり、女性不妊の約半数を占めています

 機能性不妊で重要となるのが、加齢による卵子の質の低下によるもの。母親のお腹の中にいる胎児の時からすでに卵子の元である卵母細胞が作られ、胎児期5か月頃をピークに、卵母細胞は減っていきます。胎児期に作られた卵子は出生後、20年、30年、40年と少しずつ数を減らしていき、今残っている卵子は=ご自身の年齢ということになります。胎児期に作られた卵子を何十年間と体内に保管しているわけですから、加齢による卵子の老化は避けられません。それに加え、生活習慣の乱れ心身のストレス冷えなどは体に悪影響を及ぼし、卵子の老化を早めることにもつながります。

 

男性不妊の原因

 男性不妊は何らかの影響により、受精能力をもった精子が少なかったり全くみられない状態、あるいは精子が受精するために卵子まで十分到達する能力がないことが原因で妊娠に至らないことをいいます。

男性不妊の原因となる疾患には、

 精子が全く見られない「無精子症
 精子の数が少ない「乏精子症
 精子の動きが悪い「精子無力症
があります。これらは精子の質や量、運動に問題があり、この三者を造精機能障害といいます。その他に精索静脈瘤、閉塞性無精子症、勃起障害(ED)などがあり、これらも男性不妊の原因になりますが、ほとんどの男性不妊の原因は精子の質や運動率に問題がある造精機能障害であり、その造精機能障害の約半数は原因不明とされています。

 精子は卵子とは違い出生後も毎日新しくつくられるため、卵子ほどの老化は遅いとみられますが、やはり男性も加齢に伴う精子の質や数、運動率の低下は否めません。

 

不妊症における鍼灸治療の役割

 近年、医療機関でも不妊症の治療に鍼灸治療を取り入れられるところが増え、不妊症における鍼灸治療の認知度も高まっております。イギリスでは不妊患者の3人に1人は人工授精や体外受精の妊娠率を高めるために、鍼灸治療を取り入れています。不妊症の鍼灸治療は様々な点で効果が認められますが、一方で検査で明らかになるような疾患、たとえば子宮奇形、子宮内膜ポリープ、卵管周囲癒着症など形状に問題がある「器質性不妊症」や、卵子や精子の染色体異常、形態異常(奇形)は鍼灸治療では治すことはできず医療機関での治療が必要になってきます。

 不妊原因の半数以上は原因不明とされていますが、そのなかには生活環境、習慣、食生活の影響が大いに関係していて、これらの要因が複雑に絡み合っていることが多いように感じます。体内は自律神経系内分泌系免疫系神経系などのシステムがお互い協調し合い、バランスを保ちながら身体機能を維持しております。このシステム系統がどこか1か所でも乱れれば次々と他の系統もバランスを乱し、体の不調として現れます。悩みや不安などの精神的ストレスの蓄積、日常生活の乱れなどは視床下部に作用して「視床下部‐下垂体‐生殖器」における内分泌系や自律神経系に異常をきたしたり、体の冷えや体の痛み凝りは交感神経の緊張を高め、血流を悪くして生殖器に十分な酸素や栄養が届けられなくなるために、不妊症につながります。

 西洋医学では検査で異常がなく原因がわからないものでも、中医学では月経不順、生理痛、肩こり、手足の冷え、むくみ、のぼせなど体にあらわれる症状を重要としていて、何らかの症状があること自体、体の異常だと捉えております。つまり症状を改善することで体全体のバランスが整い、妊娠しやすい体になるという考え方があります。

 したがって鍼灸治療でも中医学の考え方をベースに、今ある症状を改善させるための治療を行い、妊娠するための土台づくり、妊娠しやすい体づくりにしていきます。そのため人工授精や体外受精を行う場合でも、鍼灸治療を併用することで妊娠率が高まるという報告もあり、鍼灸治療を取り入れている施設も多いです。

 

鍼灸治療の効果

鍼灸治療は

  1. 自律神経系のバランスを改善
  2. 内分泌(ホルモン)の乱れを整える
  3. 鎮痛作用
  4. 心身のリラックス効果
  5. 筋緊張の緩和

などに期待があります。自律神経系やホルモンの乱れは血行不良や冷えをおこし、卵巣や子宮に十分な酸素や栄養が届けられなくなります。結果、卵子の質の低下や子宮機能不全を招き、それが原因で不妊症や不育症となってしまうこともあるのです。鍼灸治療は自律神経やホルモンのバランスを整えることにより、血行循環が良くなり、卵子の質や子宮環境の改善が期待できます。

不妊治療は年齢的なこともあり、焦りや不安もあるかと思いますが根気のいる治療だと思います。不妊の原因が女性だけではなく、男性側にもあることが明らかになっている現在、鍼灸治療をご夫婦で受けに来院されることが多くなりました。将来子供がほしいと思っている方、あるいは現在不妊治療をうけているが妊娠できなくて困っている方は鍼灸治療を試してはいかがですか。体質を変える、妊娠しやすい体づくりを始めることが妊娠への近道かもしれません。

           

2020 / 02 / 03  16:00

ストレスによる体の不調

ストレスによる体の不調

 学校や職場での身体的疲労や人間関係での悩み、朝の満員電車、家事や子育てなど、ストレスとなる要素はたくさんあり、生活している上でストレスは誰もが多少なりとも感じていると思います。また成熟した社会の中において、相手の期待に応えるために、社会のシステムに合わせるために体の状態を顧みず、ムチを打って体に負担をかけ続けてはいないでしょうか。

ストレスは身体に悪いものと思われがちですが、全てのストレスが悪いのではなく、適度なストレスであれば体に緊張感を与え、生活にメリハリをつけてくれます。ストレスにも肉体労働やケガ、病気といった身体的ストレスと悩み、不安、怒、快不快などの精神的ストレスがあり、これらのストレスが短期間であれば体への影響は少ないですが、長期間にわたりストレスがかかり続ければ心と体は徐々に弱っていき、症状として体にあらわれてきます。

 

ストレスと体の関係

 ストレスは仕事や家事、人間関係で日々感じることがあるかと思いますが、そのストレスは大脳の一部である大脳辺縁系という場所で生じています。大脳辺縁系というところは食欲、睡眠、性欲などの本能的欲求や快不快、悲しい、怒り、恐怖などの感情・情動をつかさどっています。そして大脳辺縁系で生じたストレスはすぐ下の領域にある視床下部というところに作用し様々な生理反応を引き起こしますが、この視床下部は生命維持をしていく上でとても大事なところなんです。

 視床下部は自律神経系内分泌系(ホルモン系)免疫系をコントロールする中枢であり、私たちの体は、この三者の機能を視床下部がうまく調節してくれるおかげで、気温や気圧等の外部環境の急激な変動があっても、体内環境(体温や血圧等)を一定に保つことができるのです。前回お話いたしました、交感神経や副交感神経である自律神経系の問題、ホルモンバランスの問題、免疫系の問題のほとんどは視床下部の機能低下が原因であらわれます。日々生活の中で生じる適度なストレスでは視床下部に作用して、自律神経系、内分泌系、免疫系を介して、体がストレスに負けないように順応しようとします。この反応はストレスから身を守る“防御反応”として体になくてはならない反応なんですが、過剰なストレスや長時間のストレス状態が続くと視床下部は疲弊してしまう上に、コントロール下にある自律神経系、内分泌系、免疫系のバランスも乱れてしまい、体に様々な症状を引き起こします。

 

ストレスが原因でおこる症状

 ストレス増大は視床下部から放出されるホルモンが増え、そのホルモンが中枢(心)に作用すると不安やイライラが生じ、身体に作用すると自律神経失調症などの症状があらわれます。具体的にどのうような症状が体にあらわれるかというと

  • 座位や臥位から急に立ち上がった時にあらわれる、めまいや立ちくらみ
  • 過呼吸症候群
  • 片頭痛や筋緊張性頭痛
  • 耳鳴り、難聴、めまいを伴うメニエール症候群
  • 首、肩コリの悪化、易疲労
  • 食欲不振や動悸、不眠症
  • 冷え、のぼせ
  • ホルモンバランスの乱れによる生理不順、生理痛、不妊
  • 喉の異物感、つっかえ感
  • パニック障害
  などがあらわれます。

 

 また、自律神経系、内分泌系、免疫系の中枢は視床下部という同じ領域にあるため、お互いに影響し合っていて、一つの系統でトラブルが生じたら他の系統まで影響が及ぼしやすくなります。新潟大学医学部名誉教授 故阿保徹先生は自律神経と免疫系の関連性を研究をされていた偉大な方で、阿保先生の一連の著書には「交感神経が緊張すると免疫系の顆粒球が増え、副交感神経が働くと免疫系のリンパ球が増える」 と伝えております。つまり不安、イライラ、心身の疲労などでストレス状況下にある時は、交感神経の高まりによって顆粒球が増え、心身リラックスして体が休息している時は、副交感神経の高まりによってリンパ球が増えているということになります。顆粒球やリンパ球は病原体から体を守ってくれる大事な免疫細胞ですが、ときに交感神経が過緊張して顆粒球が増えすぎると、逆に体に不利益な反応が起こり、さまざまな疾患を引き起こしてしまいます。阿保先生によると顆粒球の増加は、自分の体の組織を破壊し胃潰瘍潰瘍性大腸炎過敏性大腸症候群慢性関節リウマチがんなどの原因になるといっております。

 

ストレスによる体の不調を軽くするコツ

 同じストレスの状況下に置かれていても、そのストレスに対しての受け止め方は人それぞれ違い、平然としている人もいれば、それを引きずってしまったり、それがきっかけで体調を崩す人がいたりと症状がでるかでないか、症状の出方や程度は人それぞれ異なります。それはその人の性格、気質などによりストレスによる対処適応能力が違うからです。とくに性格として多いのが「生真面目」「几帳面」「妥協を許さない」といった自分に厳しい方に多く見受けられます。また仕事一辺倒にもくもくとこなすタイプの人は、あることがきっかけで一度つまずいてしまうと、崩れ落ちるように体調が悪化しすくなります。

 性格というものは持って生まれたものですから簡単には変えられませんが、症状がでるということは体からの信号でもあります。まず「少し妥協する」「自分に甘える」「自分を労わる」というところから初めてみてはいかがでしょうか。

 そしてつらいこと、悲しいこと、イライラすること、不安に思うことは全部吐き出しましょう。今持っている感情を理性で押さえつけてしまうと、視床下部が制御不能になり自律神経系、内分泌系、免疫系に影響が及び様々な症状を引き起こします。気心知れた友達や会社の同僚としゃべったり、楽しいことをして発散したり、時には泣いたりすることも大事です。一瞬でもいいので嫌なことから解放しましょう。

 お風呂が嫌いでなければ、熱すぎないお風呂にゆっくりとつかりましょう。体の芯まで温めることでとてもリッラクスでき、副交感神経が働きます。

鍼灸治療はストレスによって引き起こされる症状を軽減するだけではなく、脳の神経伝達物質でリラックス効果のあるセロトニン、症状の発現を抑えるオキシトシン、鎮痛効果のあるエンドルフィンの分泌を促す効果があるといわれています。不定愁訴でお悩みの方、なかなか治らないなどお困りの方は鍼灸治療を試されてはいかがでしょうか。また当院では気の流れを促進させ、リラックス効果のある薬膳茶をつくっております。

                      

 

 

 

 

 

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和養鍼灸院
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