お知らせ
気血水の偏りによる分類と症状
人の体には「気」「血」「水」が流れており、エネルギーや栄養、潤いを供給しています。この3つの要素が充実して、滞りなく流れていれば心身は健康を保つことができます。
気血水はお互いバランスを取りながら働いているため、3つのうち一つでも過不足や滞りが生じると、お互いのバランスが崩れ症状が現れやすくなります。
首や肩が凝る、腰が痛い、手足が冷える、食欲がないなど、日常生活で訴えることが多い症状ですが、「気」「血」「水」の観点から考えると、同じ症状にみえても、例えば“気”が少なかったり、“血”が滞っていたり、あるいは“水”が多すぎたりと人それぞれ症状を引き起こしている病態は異なります。
気が少ない(気虚)
生命活動の根本をなす気(エネルギー)が少なくなった状態です。
- やる気が出ない
- 疲れやすい、体が常にだるい
- 汗をかきやすい
- 食欲がない
- 免疫力が低下しがちのため、風邪をひきやすい
- 胃がもたれる
- 下痢をしやすい
- 体が冷える
慢性の疲労や過労は気が消耗してしまうため、気が少なくなる原因になります。
また食物を消化・吸収して気を生成する働きがある脾胃(五臓六腑)の機能が低下することによって、食べ物から「気」を作り出すことができなくなるため、気虚をおこします。
生まれつき気が少ないケースもあり(先天の気の不足)、いわゆる虚弱体質のほとんどは気虚の状態です。
(対策)
気は体を使えば使う程、消耗していきます。日々の労働や運動でも気は消耗されてしまいますので、疲労の蓄積はなるべく避けて、日々体のケアを行い、疲れを残さないようにします。そのためには十分な睡眠をとり、食事は冷たいものは避け、温かいものを中心に摂取しましょう。
気を補う食材としては米、イモ類、豆類、かぼちゃ、キャベツ、しいたけ、カツオ、さばなどがあります。また同時に気の流れを促す作用の食材を摂取することで、より気の作用を高められるので一緒に摂取しましょう。気の流れを促す食材としてはそば、たまねぎ、長ネギ、柑橘類などがあります。
気の流れが悪い(気滞)
気の流れが悪くなり、滞っている状態。
- 精神的に情緒不安定で、よくイライラしてしまう
- 不眠
- 憂鬱
- お腹、季肋部周辺が張る
- 喉に違和感がある
- よくせき払いをする
気の流れが悪くなる一番の原因はストレスによるものです。
(対策)
ストレスにより気の流れは滞りやすくなりますので、ストレスを溜め込まず、まずはリラックスすること。
香りのいいものは気の流れを良くする効果があるといわれています。オレンジやみかんなどの柑橘類、紫蘇、ハーブは気の流れを促し、気分的にリラックスすることができます。ご自分の好きな香り、リラックスできる香りを見つけてみましょう。
血が少ない(血虚)
体に栄養や酸素を届ける血が少なくなっている状態です。
- 顔色が蒼白
- 肌が乾燥している
- 眠りが浅い、よく夢をみる
- 目が疲れやすい
- めまいや立ちくらみ
- 手足のしびれ
- 足がつる
- 生理不順
食物から血を生成する脾胃の機能や、血を貯蓄する肝(五臓六腑)の機能が低下すると血虚になりやすいです。その他、目の使い過ぎによっても血は消耗されます。
(対策)
目と血の関係性は深く、目を使いすぎると血は消耗され、逆に血が少ないと眼精疲労を感じやすくなります。そのため目を休息させる時間を増やし、画面を見る時間をなるべく減らしましょう。
血を増やす食材にはニンジン、小松菜、ほうれん草、落花生、肉類などがあります。
血のめぐりが悪くなっている(瘀血)
血がドロドロになって、血行が悪い状態、あるいは血の塊を形成して体内で悪さをしてしまっている状態です。
- 慢性の肩こりや腰痛
- 頭痛がある
- 顔がくすんでいる
- しみやそばかすができやすい
- 目にクマがある
- 生理痛が強い
- 生理不順がある
血の流れが悪くなる原因としては冷えや脂っこい食べ物の過剰摂取、ストレスなどがあります。
体のエネルギーである「気」は血を動かす作用もあるため、気虚や気滞によって血を動かせなくなると瘀血が生じやすくなります。瘀血は特に女性特有の症状と関連が強く、瘀血があることで生理不順や生理時の強い痛みを伴います。
(対策)
まずは体を冷やさないように保温することを心がけましょう。その上で疲労やストレスによっても瘀血を生じやすいので、体の十分な休息をとり、疲労やストレスを溜めないようにしてください。
血のめぐり良くする食材としてはチンゲン菜、黒豆、にんにく、らっきょう、お酢、そば、玉ねぎ、柑橘類などがあります。
水が過剰にある(痰湿)
体内に余分な水分が溜まっている状態です。
- 体が重だるい
- めまい、ふらつき
- 吐き気、嘔吐
- 食欲がない
- 足がむくみやすい
- 下痢をしやすい
水分代謝が悪くなると体に水分が溜まりやすくなります。五臓六腑の「脾」「肺」「腎」「三焦」は水分代謝にかかわり、これらの機能低下によって痰湿が生じやすくなります。また水分の過剰摂取も体内に水分が溜まりやすくなります。
(対策)
適度な運動や入浴で汗を流しましょう。
水分を排出する食材にはハトムギ、小豆、大根、スイカ、冬瓜、セロリ、きゅうりなどがあります。これらの食材の多くは体の熱を冷ましてしまう作用もあるため、冷え性の人は温かく調理した状態で食べてください。
「気」「血」「水」の機能失調によって、それぞれ「気虚」「瘀血」「気滞」というように単独で症状を引き起こしている場合もありますが、「気」「血」「水」はお互い影響し合っているため、気が少なくなることによって血も少なくなったり(気血両虚)、水分代謝が低下して水の停滞(痰湿)を引き起こすこともあります。また気が滞ると、血の循環も停滞して瘀血を形成してしまうことも多いです。
症状が多く不定愁訴がある場合、気、血、水の病態が複雑に絡んでいる可能性があります。
鍼灸治療では気血水を含めた体のバランスを総合的にみて、患者さんの体質、症状、状態に応じて治療を行っていきますので、症状が同じでも施術方法や養生方法は人それぞれ違います。症状はあるけれど、原因がわからず悩んでいる方、長期にわたり症状に苦しんでいる方は一度ご相談ください。