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2020 / 03 / 10  17:39

「疲労」と「疲労感」

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仕事や家事、運動、人間関係やノルマ達成など、生活していくうえにおいて常に人間の体にはストレスがかかっています。現在人口の6割の人が疲労を自覚し、全体の3割の人が6か月以上持続して疲労を感じています。疲労による体への影響はあまり感じないため軽視されがちですが、痛み・発熱と並ぶ体の三大危険信号に位置図けられています。疲労の放置は酸化ストレスにより細胞の老化を早めたり、脳が疲弊し、自律神経系、内分泌系、免疫系に不具合が生じることによって、多様な症状、疾患が発生しやすくなります。

 

疲労に関わる部位

眼窩前頭野
ちょうど眉間の真後ろに位置している前頭葉の一部で、物事を考えたり、コミュニケーションをとるなど高次の知的機能を持つ。疲労を感知する部位になります。

前帯状回
大脳辺縁系に属し、自律神経機能の中枢機能、情動や共感の認知機能をもっています。集中力をコントロールします。

視床下部
前帯状回とともに自律神経をコントロールする部位であり、その他に内分泌系や免疫系調節の役割も担っています。

疲労因子FF
たんぱく質の一種で、活性酸素が細胞を傷つけた際に産生される老廃物。
血中にたくさんのFFがあると細胞の機能が著しく低下します。この状態のことを狭義の意味で「疲労」といいます。階段を上ったり、精神的ストレスで過緊張していると疲労因子の量が跳ね上がります。

 

 

 

 疲労を感じるメカニズム

体を動かしたり、座って作業をしていたり、寝ている時でさえも呼吸によって酸素を体内に取り入れ、エネルギーをつくっています。そしてエネルギーと一緒に産生されるのが活性酸素です。活性酸素は細胞を酸化させ(錆びつかせる)、細胞の機能を著しく低下させる原因となります。極度な肉体的疲労、精神的疲労で大量の酸素が消費されれば、多量の活性酸素が発生します。
近年の研究で活性酸素が細胞を酸化させる過程で発生する疲労因子FF(たんぱく質の一種)が疲労を引き起こす原因ということがわっかてきました。疲労因子が産生されると、その疲労因子を察知した免疫細胞から生理活性物質(炎症性サイトカイン)が分泌されます。そのサイトカインが脳にある眼窩前頭野に伝えられ、疲労として認知されます。つまり眼窩前頭野にサイトカインが伝わることで「疲れた」と疲労を感じるのです。狭義の意味で「疲労感」といいます。

自律神経中枢である前帯状回や視床下部は常に酸化ストレスにさらされています。人は激しい運動をすれば、大量の酸素が消費し、活性酸素も多く産生されます。その結果、疲労を感じることはごく普通の現象ですが、大事な会議が終わった後、パソコンやデスクワークで集中して作業をした後など、大して体を動かしていないのに疲れを感じたことはないでしょうか。あるいは暑い夏場に少し歩いただけなのに汗を多量にかき、疲れがどっと感じたことがあると思います。これらは自律神経を調整している視床下部、前帯状回の疲労の蓄積によって起こる「脳疲労」なのです。自律神経はどのような環境下でも、体内環境を一定に保とうします。気温が高ければ体温を下げようと汗をかき、熱を外に逃したり、集中している時は交感神経が働き、緊張状態を保ったりと常に視床下部などは体内環境を監視し自律神経を介してコントロールしています。視床下部などでも酸素が使われていますので、活性酸素が産生されています。そして酸化ストレスの信号は眼窩前頭野に伝えられ「疲労感」が発生するわけです。

 

自律神経中枢である視床下部や前帯状回は、外部環境の変動があっても呼吸、消化吸収、血液循環、脈拍など体内環境を一定に保とうと昼夜常に機能してるところですので、自律神経中枢は疲労が最も生じやすいところでもあります。運動やデスクワーク、思い悩みによる疲れは体の疲労ではなく「脳の疲労」です。疲労を感じるということは、「これ以上自律神経に負担をかけないでください」という体からの危険信号でもあり、休息を欲求している合図でもあります。この疲労感を無視して体に負担をかけ続けてしまうと、自律神経機能が乱れるだけではなく、内分泌系、免疫系の症状や疾患があらわれてしまいます。
休んでいるつもりでも体の疲れがとれない場合、「脳疲労」が蓄積している可能性があります。

 

疲労に対する鍼灸治療

慢性疲労症候群(6か月以上続く全身性の激しい疲労感)の患者さんの脳血流量を調べたところ、前帯状回、眼窩前頭野、背外側野、海馬などの部位に脳血流量の低下を認めたという報告があります。これらの部位の血流量低下に伴う症状は自律神経失調であらわれる多彩な症状と一致しています。
疲労に対する鍼灸のはっきりとしたメカニズムはわかっておりませんが、鍼灸は脳血流量の増加セロトニン分泌の増加自律神経機能の調節の有効性が認められています。他にも脳にプラスの作用機序が働いていると考えられますが、これらの作用の相乗効果により疲労に対する効果があるのではないかと思います。

 

人はやりがいのある仕事だったり、生活に生きがいを感じたりすると体の疲労を忘れて、いつまでも頑張ってしまいがちです。このとき脳内では、快感や多幸感をもたらすエンドルフィンやカンナビノイドという脳内物質が分泌されていて、これらの物質が眼窩前頭野に作用することで、眼窩前頭野が発する「疲労」アラームを隠してしまっている状態にあります。疲労はなくったわけではなく隠されている状態なので、疲労は蓄積していき知らず知らずのうちに体の機能は乱れていきます。そうならないために疲労を少しでも感じたら休息をとり、日々の食事、睡眠などの生活習慣を心がけて、無理を強いられている体を労わってあげましょう。

 

 

和養鍼灸院
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