お知らせ
腰椎椎間板ヘルニアの症状と原因
整形外科疾患で患者さんの訴えが最も多い症状は「腰痛」です。
腰痛は加齢に伴って発症しやすい症状でもありますが、働き盛りの中高年の世代やスポーツを盛んにしている人にも多く、幅広い世代にわたって腰痛に悩まされています。比較的若い世代では腰椎分離症・すべり症、腰椎椎間板ヘルニアが多く、中高年以降から段々と腰椎や椎間板が摩耗していき、腰椎に変形が生じる腰椎症や神経の通り道が狭くなることによっておこる脊柱管狭窄症が増えてきます。
体の中心には背骨(脊柱)があり、柱として上体を支えながら可動性を有しております。脊柱は小さな骨(椎骨)が積み木のように重なって、脊柱を横からみると真っ直ぐではなく、なだらかなS字カーブを描いています。(生理的湾曲)。そして椎骨と椎骨の間には軟骨組織である椎間板があります。椎間板は中心にある「髄核」という水分を含んだゼリー状の組織と、髄核の周囲を多層に覆う「線維輪」からなっています。椎間板は足から伝わる衝撃を吸収したり、体重による負荷を緩和するクッションのような役目を担っています。上体を前に曲げたり、後ろに反らしたりとスムーズに動かすことができるのは椎間板があるから可能となるのです。
整形外科医 故ナッケムソン先生は姿勢と椎間板にかかる圧力の変化を調べられ、先生によると立位時の椎間板にかかる圧力を100%としたら
- 立位前かがみでの椎間板内圧150%
- 椅子に座った状態は140%
- 座った状態での前かがみは185%
- 仰向けで寝た状態は25%
- 横向きで寝た状態は75%
と姿勢の変化で椎間板内圧が変わると言っています。つまり椎間板性の腰痛(椎間板ヘルニア、腰部椎間板症)は椎間板内圧が高まる前かがみになった状態、椅子に座った状態の時に症状が強くでます。特に物を持ち上げる動作は椎間板に強い圧力がかかり、椎間板損傷を引き起こしやすくなります。働き盛りの20代から40代に多い椎間板ヘルニアは急激に椎間板内圧がかかる動作、例えば物を持ち上げる、姿勢が悪い状態で長時間座っている、激しく体を動かすというようなことで発症します。
椎間板ヘルニアとは
椎間板ヘルニアとは椎間板内圧が強くかかった結果、髄核が周りの線維輪を突き破り後方に膨隆、もしくは髄核自体が外に漏出した状態のことをいいます。「ヘルニア」とは体の組織が本来あるべき位置からはみだした状態、膨隆した状態のことをいいます。特に頸椎(脊柱の首の部分)や腰椎は可動域が大きく、姿勢の変化による影響を受けやすいためヘルニアが起こりやすい場所でもあります。
腰椎椎間板ヘルニア症状
- 強い腰痛と下肢への痺れ・痛みがおこります。腰椎(仙骨の上から数えて5つの椎骨)のすぐ近くには下肢に伸びる感覚神経や運動神経が走っています。ヘルニアの大きさによってはこれらの神経を圧迫して下肢のしびれ、痛みがでやすくなるのです。(坐骨神経痛など)
椎間板内圧が高まる前かがみ姿勢や座位で症状が強くなります。
- 馬尾神経に障害が及ぶと排尿や排便といった排泄にかかわる機能に障害があらわれます(膀胱直腸障害)
椎間板ヘルニアの危険因子
- 椎間板は20代から変性(老化)がはじまると言われています。変性すると椎間板の水分が失われていくため、弾力性が低下していき線維輪が裂けやすくなります。そのため重たいものを持ち上げたり、長時間に及ぶ座位姿勢は椎間板を損傷しやすくなります。
- 腰椎は姿勢による影響を受けやすい場所でもあります。人の脊柱は直立した状態ではなく、横から見るとなだらかなS字カーブを描いています。頸椎は前弯、胸椎が後湾、腰椎が前弯というようにそれぞれがある程度の角度で湾曲していることで、体への負荷を少なくしバランスのとれた理想的な姿勢であるといえます。特に腰椎の前弯があることにより椎間板にかかる負荷は最小限に抑えられ、体を安定的に保つことができます。しかし体が丸まった、いわゆる猫背姿勢やお腹を前に突き出した姿勢(sway back)というのは腰椎の前弯が減少した状態になります。腰椎の前弯の低下は椎間板内圧が高まってしまうため、椎間板の老化が早くなり傷みやすい状態だと言えます。
腰椎椎間板ヘルニアや椎間板性腰痛は生活に支障がでる程の症状、緊急を要する場合を除いて、基本的に保存療法で経過をみていきます。ヘルニアは三か月程で緩解することが多いですが、それ以降も腰痛や足の痺れなどの症状が残ることもあります。それはヘルニアによる影響もゼロとは言えませんが、その他に考えられる原因としては姿勢や長時間の座位といった椎間板に負荷がかかり続けている状態だったり、筋柔軟性の低下、筋力のアンバランスなどが考えられます。 当院では痛みや痺れの施術と同時に姿勢や動作などの評価を行い、その原因に応じた施術も行っておりますので痛みやしびれでお悩みの方はお気軽にご相談ください。